ビジネスや人材がグローバル化する現代において、グローバルに事業を展開する日系企業で働く外国籍社員が年々増えています。テンナイン・コミュニケーションで、法人向けに日本語レッスンを設計・提供している日本語講師として、日々多くの企業様からご相談を受けるのが、
「外国籍社員から日本語研修を望む声が多く上がっているが、何から手を付けたらよいかわからない…」
「そもそも何を目標に、どんな内容で研修を設計したら良いかわからない…」
「まずは誰かに相談したいが、どこに問い合わせたらよいかわからない…」
といった課題です。
実際、「日本人社員への英語研修」は多くの企業で実施されているものの、「外国籍社員への日本語教育は実施できずにいる…」という企業様が多いのが現状ですが、導入に踏み切れない最大の要因は「日本語研修がどういったものかイメージが付かない」ことにあります。
そこで本記事では、外国籍社員への日本語研修を実施するにあたり、考慮するべきポイント徹底的に解説していきます。
目次
1. 日本語研修導入前に明確にすべき3つの点
外国人社員への日本語研修と一口にいっても、それぞれの企業によってその規模や目的、受講者のステータスは様々です。研修設計の際には「外国人社員 日本語研修」と検索して各社の日本語研修サービスを比較するより、まず自社の状況について把握する必要があります。
「日本語研修についてお話をお伺いしたいです」とお問い合わせくださる企業様に私が日本語講師の立場から、まずお聞きしているのが「学習者のレベル」「研修の目的」「受講対象者の人数」です。この3つを明らかにすることで、その企業にあった日本語研修が見えてきます。
1.1 学習者のレベル
学習者のレベルが重要なのは、レベルによって最適なレッスンスタイルに大きく関わってくるためです。
初級者はまずインプットから始める必要がありますし、逆に上級者はよりスピーキングの機会が多いレッスンの方が向いているなどです。自社の外国人社員の日本語レベルをある程度把握したうえで、研修を探す必要があります。
1.2 研修の目的
研修の目的によって、日本語研修の位置づけや実施する研修の内容が左右されます。
例えば、すでに社内に多くの外国人社員がおり、日本人も外国人も混ざるチーム間でのコミュニケーションを促進したい場合、外国人社員が「ビジネスシーンで・すぐに使える日本語」に特化した研修を実施する必要があります。
逆に福利厚生の一環として日本語に触れる機会を外国人社員に提供したいという目的であれば、日常生活に即した内容のグループレッスンや、日本の文化に触れられるような研修内容がより適している可能性があります。
1.3 受講対象者の人数
受講対象者の人数は、人事の方の立場からすると最も重要なポイントかもしれない「予算」に関わる部分です。
一般的に、グループレッスンの方が一クラスに参加できる人数が多く、またあらかじめ決められたカリキュラムを扱うことが多いため、学習者一人当たりにかかるコストが低くなります。
逆に、日本語研修を、マネージャークラスなどの限られた数人に提供する場合には、一人当たりのコストパフォーマンスではなく、より実務に即した日本語を学べるプライベートレッスンが適しているというような判断をする必要があります。
1.4 適した研修スタイルを予算内で組み合わせる
「学習者のレベル」「研修の目的」「受講対象者の人数」の3点を考慮することで、まず日本語研修の大枠を決めることができます。
グループレッスンがいいのかプライベートレッスンがいいのか、カリキュラムは文法重視がいいのかアウトプット力強化重視がいいのか、そしてビジネス日本語を学ぶのか、日常生活に役立つ日本語を学ぶ研修が良いのか。
この3つを起点に研修の設計をスタートさせることで、どんなレッスンが自社に適しているかを考える土台となります。
2. レッスンのスタイルは受講者のレベルで判断
1.1で受講者のレベルがレッスンのスタイルに大きく影響してくると述べましたが、まさに①インプット重視かアウトプット重視か、そして②グループレッスンかプライベートレッスン が受講者のレベルを考慮し検討する必要がある箇所になります。
2.1 初級者にはインプット重視のグループレッスンがおすすめ
初級レベルの学習者には、絶対にグループレッスンが向いています。
初級学習者は、まず日本語の文字や基本語彙、基礎文法などを多くインプットする必要がありますが、それには、反復練習がかなり必要になります。これは日本語講師と一対一で行うよりも、ある程度の人数がいるグループレッスンの中で学習をすることで、単調に思える活用の練習でもモチベーションを保つことができ、かつ定着度も上げることができます。
また、知っている語彙がまだ少ない初級者がグループレッスンに参加することで、同じクラスの参加者のミスから文法を学んだり、自分の知らなかった新しい語彙などを得ることもできます。
初級者にとってまず必要になるのは「大量のインプット」のため、グループレッスンの方が初級者は伸びが早いです。
2.2 中級者・上級者にはアウトプット重視のプライベートレッスンがおすすめ
中級者、上級者については、その学習者の「何ができていないのか」をアウトプットで測り、足りない部分や苦手な部分に特化して強化していく必要があります。
中級以上になると、むやみにインプットを行うよりも、実際にその学習者が自分自身で文を作り、話し、その中でミスを講師が直していくことによって、学習者の日本語の精度を上げていくことができます。
このように学習者のアウトプットをもとにレッスンを進めていく場合は、プライベートレッスンでしっかりと時間をとった個人指導が向いています。
3. 日本語学習の目的は大きく3つ
日本語研修の目的は大きく①生活の日本語、②業務における日本語、③資格のための日本語の3つに大きく分けられます。
3.1 生活に必要な日本語を身につけるなら「文字の学習・フレーズの習得」を重視
外国人社員の日本での生活を支えられる日本語研修を設計するのであれば、日本で生活していく上で必須の知識となる「文字の学習」そして、端的に自分の意図を日本語で伝えられる「フレーズ」に特化をして学習をするのが有効です。
ひらがなかたかな、さらには日常的によく使われる漢字がわかれば、町の標識やサイン、ATMなどの機会の操作など、日常生活で必要な日本語を理解するための基礎を築くことができます。
また、フレーズについては買い物や病院など生活の中でよく聞かれたり答えたりする必要がある質問などを洗い出してカバーしていくことで、外国人社員の日本語学習を支える研修が実現できます。
3.2 日本人の中に混ざって日々仕事をする必要があるなら「敬語」が重要
日本企業の中でスムーズなコミュニケーションが取れることを目的として研修を行いたいという場合には、「敬語・丁寧な表現」の学習が重要になります。企業で日本語研修を実施する企業の多くがこのタイプにあたります。
「~ていただけますか」と仕事を依頼したり、「~してもいいですか」と許可を取るといった実用的な敬語フレーズの他、「~なくはないんですが…」、「~た方がいいかもしれません」など、日本語特有の丁寧な表現は、特に外国人社員にとっては文化的にも馴染みづらい部分でありつつ、ビジネスシーンで間違えてしまうと悪い印象を与えるような表現でもあります。「業務で日本語を使いこなせるようになる」ことが研修の目的であれば、敬語の学習が大きなカギなります。
3.3 JLPTなどの資格習得を目指すなら「文法・単語力」がカギ
企業で提供する研修ではあまり多くはないですが、検定対策で日本語研修を実施したいという場合には、正しい文法、高度な単語力に絞った内容が効果的です。
正直、検定で聞かれる日本語はビジネスシーンに関わるものも少ないほか、N2やN1になると、日本人でも普段あまり使わないような難しい語彙が山ほど出てきます。日本語能力試験のために研修を行うのであれば、片手間ではなく、それに特化したレッスンを行うことがとても重要です。
4. 受講者の人数は予算に直結する要素
最後に考慮すべき重要な点、それが予算の確保にも大きく関わる受講者の人数です。人数が増えれば増えるほど基本的に研修費用は上がっていきますので、自社に必要な研修を見極め、実施形態を決定することがポイントです。
4.1 1~2名のエグゼクティブやマネージャークラスには「実務特化型日本語研修」
業務におけるキーパーソンに日本語でも高いレベルでコミュニケーションを取ってもらいたいという場合は即効性の高い実務に特化した日本語研修がおすすめです。
例えば、外国人社員のみで構成されるチームをまとめるマネージャーの外国人社員向けに、他の日本人マネージャーたちと進捗報告をしたり会議に参加・発言したりできるような日本語を身につけてもらいたい、というようなケースです。
このような立場にいる外国人社員の方々は、そもそもある程度の意思疎通ができる日本語をすでに備えている場合が多いです。そこからさらに、よりコミュニケーションを活性化・円滑化させたい場合には、研修の対象人数を絞り、本当に必要な人にだけ日本語研修を提供するのが手です。
4.2 3~50名程の日本人と日々働く外国籍社員には「集団でのスピーキング特化型研修」
すでに社内に外国籍社員が一定数いる場合は、一人ずつにプライベートレッスンとなると単価が上がってしまうため、基本的にはスピーキングを多く取り入れ、集団でお互いに学び合えるグループレッスンがおすすめです。
ある程度の人数がいることで他の受講者の質問からそれまで知らなかった日本語や文法を理解することができたり、集団で学ぶことで切磋琢磨して研修に取り組み続けられるという特徴もあります。
4.3 50名以上の外国籍社員の生活に役立つ日本語を教えたい場合は「セミナー研修」
最後は対象となる外国籍社員がとても多い場合にお勧めできるのが、セミナー形式での研修です。
文法や語彙などを細かく分けて扱うのではなく、「買い物で使える日本語」「病院で使える日本語」等にトピックを絞って、その場面に必要な日本語を学ぶという形式です。
一人当たりの発話機会はもちろん減ってしまいますが、より多くの外国人社員に、日本語に触れる機会を提供することができるため、レッスンを本格的に導入する前に、まずセミナーで日本語に親しんでもらうという目的でも活用することができます。
5. 研修の設計に困ったらテンナインにご相談ください
ここまで、外国人社員への日本語研修を設計する上で重要なポイントについて説明してきましたが、ただそもそも「自社の外国人社員のレベル感がわからない」「自社の人数だとどれが合うのかわからない」など、なかなかうまく想定できない部分も多くありますよね。
そんなときはまず、日本語研修のプロに相談するのが一番です。弊社テンナイン・コミュニケーションでは、幅広い業界の企業様に、多種多様な日本語研修をご提供しております。
5.1 英語で行う日本語レッスン
テンナイン・コミュニケーションでは、「英語で」日本語研修を行うことが可能です。
もちろん日本語でレッスンを行うこともできますが、初級者向けのレッスンや研修になると、直接法(日本語で日本語を教える方法)では時間がかかります。日本語学校などではこの直接法を使ってレッスンを行う場合の方が多く、市場で「完全英語で」日本語を教えることができる研修機関はほとんどありません。
5.2 ビジネスに直結する表現が学べる
テンナイン・コミュニケーションでは「ビジネスシーンの日本語」に特化した研修の実施が可能です。
まさに外国人社員の方が業務ですぐ使える日本語力を養うのに特化してるほか、各業界で必要な日本語に合わせ、カリキュラムをカスタマイズすることも可能です。近年ではIT企業様からのお問い合わせが増えていますが、「バグの修正」「コードの確認」など、市販の教材では扱うことができない、業界特化型の研修も実施しております。
5.3 完全カスタマイズでニーズに合わせた研修が可能
テンナイン・コミュニケーションでは、基本的に企業様からのご要望を受け、最適な日本語研修プランを設計し、ご提案させていただきます。
規模感や研修を実施する目的など、細かくヒアリングさせていただいたうえで、「本当に必要な日本語」に絞った研修が可能です。「何から手を付けたらよいかわからない」という研修ご担当者の方は、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
本記事では外国人社員への日本語研修を設計するためのポイントについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。単に「日本語レッスン・研修」と調べると、スクール通学型の日本語教育機関が出てきてしまう場合が多いため、まずは「ビジネス日本語」に特化した研修サービスを探すのが有効です。
弊社テンナイン・コミュニケーションでは、外国人社員への日本語研修について、ヒアリングから研修プランの作成、実施まで幅広く行っております。
「自社だとどんな研修が適しているのかわからない」とお悩みのご担当者の方は、ぜひ一度弊社までお問い合わせください。
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